家庭で使う電気陶芸窯の上手な選び方

「思い切って陶芸窯を購入し、誰に気兼ねすることもなく好きな時に、自分の創造力を生かして思う存分作品を作ってみたい」これは陶芸を愛する方が、誰しも一度は描く夢ではないでしょうか。

長年の夢をかなえるべく、ついに思い切って陶芸窯を購入する決意をして、ガス窯、石油窯、電気窯といろいろ検討の結果、自宅は住宅街だし部屋の中で使うにはやはり匂いの出ない電気窯にしようとの結論に達しましたが、そこで最後の難関が待っています。
「さて、どんな電気窯を買ったらいいんだろう・・、メーカーはみんな自分の製品が一番だと言うし、安い買い物ではないから買った後で後悔だけはしたくない・・。」

そんな陶芸愛好者のために、陶芸窯を販売してこの道何十年のキャリアを持つ、「陶芸.com」ベテラン担当者より、電気陶芸窯の選び方のポイントをお伝えします。

@ 炉内寸法

炉内寸法は大きいに超したこたはありませんが、炉内が大きくなればなるほど大型機となり、当然価格も高くなります。 安い電気窯ですと炉内寸法が幅20cm×奥行20cmなどというものもありますが、大皿が焼けないのを始め、あまりに焼ける作品に制約がありすぎ、すぐに物足りなくなってしまいます。

その意味では家庭用の小型機といえども炉内寸法が、最低幅30cm×奥行30cm以上のモデルを選んでおくと、展示会などに出展用の大作を除けば、ほとんどの作品が作れるので有効に使えます。

ちなみに20cmの炉内寸法の窯には最大で19cm直径のお皿を入れての素焼が可能ですが、作品は本焼して仕上がるまでに平均14%程度は焼締まって収縮しますから、出来上がる作品は直径16cm程度のお皿が最大のサイズとなります。

A 炉壁材質

陶芸.comで取り扱っている電気窯は、炉壁の材質は耐火断熱レンガの製品が多いですがですが、これには大きな理由があります。
炉壁にセラミックファイバーのみを使えば軽量化できますし、コスト的にも安く製造できます。 事実こうした仕様で安く販売しているメーカーもありますが、セラミックファイバーは焼くと硬化してもろくなり、ヒーター線の交換の際に、ピンの打ち直しができないため炉壁ごと交換する必要のある製品もあります。

ヒーター線は消耗品で使えば徐々に劣化して交換も必要となりますので、ヒーター線の交換を容易にした仕様の製品(窯わんやセリエ4070のパネル式ヒーター)を選ぶと、メンテナンス費用が安くて済みます。

B ヒーター

ヒーター線は俗にいうニクロム線ですが、スエーデン製のカンタル線や国産のバイロマックス線などメーカーによってそれぞれの思惑で採用しております。 多少の性能の差はありますが、実際の焼成においては決定的な違いがありません。

むしろ性能差(メンテナンス上)が出るのは、ヒーター線の取付け方式の違いです。
ヒーター線の取付け方式には、主にウェーブ式とコイル式の二通りがありますが、最近は窯わんやセリエのようにパネル式のウェーブ線を採用した製品もでてきました。

ウェーブ方式は耐火断熱レンガの壁面にヒーター線をウェーブ状にはわせ、小型機で500本以上、大型機になると1000本以上のピンで直接レンガに止められています。

コイル方式はヒーター線が2cm幅程度のコイル状になっており、耐火断熱レンガにヒーター線を埋め込むための溝を刻み、その溝の中にヒーター線をはわせております。

焼成の熱効率でいえばウェーブ線の方が、直接線がむき出しで這っている分だけ有利ですが、逆に熔けた釉薬が直接くっつきやすく焼成の際、作品の置き方に注意しないと断線の原因が発生しやすいという問題はあります。ただ、これも決定的な差とは申せません。

実は、両者の違いで最大の点は、ヒーター線交換のメンテナンスの容易さにあります。
ヒーター線は使用すれば徐々に消耗(焼け細り)をしますので、通常の使用で200回〜300回程度で交換が必要となります。ガスバーナーを併用した還元焼成をすると寿命は100回程度に縮まります。

前述の通り、ウェーブ線は500本以上のピンで直接レンガに止めてありますので、交換が非常に大変で、メーカーのサービス料も高くなります。 コイル方式はピン止めもほとんどなく、部品だけ取り寄せてユーザーが自分で交換することも可能です。

ただし、製造上は、耐火断熱レンガにコイルを埋める溝を掘る加工が必用なため、生産に手間がかかり商品価格は高くなる傾向にあります。 パネル式はヒーター線をパネル式のユニット形式にしたもので、交換が簡単にできるのが大きな特徴で、ピンの打ち直しができないセラミックファイバー製の窯にとっては画期的な方式です。

C 焼成方式

メーカーによって表現がまちまちですが、現在の電気窯にはマイコン内蔵で焼成プログラムも組み込まれており、スタートスイッチを押すだけで一切手をかけないで、温度上昇カーブまで全てコントロールして焼成をしてくれる全自動タイプと、スタート前に焼成条件を設定し焼成中にも多少の温度調整を必要とする半自動タイプ(マイコンによるプログラム方式が出るまではこれを全自動と呼んでいた)の二通りがあります。

どうせ電気窯を購入するなら、断然マイコン内蔵のプログラム制御方式が楽ですからお勧めです。ただし、価格はメーカーにもよりますが、同じ仕様の窯でもマイコン内蔵のタイプが10万円以上は高くなります。 半自動タイプの窯を、いまだに全自動と表示しているメーカーもありますから、購入前によく確認する必要があります。

D 還元焼成

電気窯は基本的には酸化焼成用の陶芸窯ですが、還元焼成のために別にガス窯や石油窯を購入するのは大変ですし、第一場所もありません。

そこで、電気窯によっては下部にトチバーナーを差し込み、簡易還元焼成を可能にしたモデルがあります。(焼成の状況としては、中性炎での焼成に近いとお考え下さい。)

電気窯1台だけで使う場合には、還元焼成が可能な電気窯の方が焼ける作品の幅が増えてお得です。 ただし、還元焼成はヒーター線の消耗を酸化焼成の3倍は早めますから、酸化で2回焼いたら1回還元というようにポイントを絞って使用すべきです。

E外装(本体)

電気窯本体の外装は焼成そのものの性能とは関係ありませんが、焼成の際には水蒸気が発生し、錆びの原因となります。したがって、小型機においては鉄板に塗装をしたものよりは、ステンレスを外装に採用したモデルの方が、高級モデルとして価格は高くなりますが、錆びにくいので長くきれいに使用できます。

F100V電気窯と200V電気窯の違い

最近は100Vの電気窯の新製品が相次いで発売され人気を博していますが、100Vと従来からある200Vの窯の主な違いは以下の通りとなります。

100Vの窯は普通の家庭電源でそのまま使えるというのが最大の利点です(家庭電源の契約アンペア数は増やす必要がある場合もあります)。ただし、100Vで使える電気容量は1.5KWが限界のため、炉内サイズは小さいものしか作れないとういネックがあります。

それに対し、200Vの窯は炉内サイズが大きく本格的な窯となりますが、200Vの電気工事代が必要となります。
電気工事代の目安としては、新規で200Vの電源引き込み工事をすると、13万円〜18万円程度(建物の状況によります)ですが、最近の住宅にはエアコン用などに最初から200V電源を引き入れてあるケースもありますので、もっと安く済むこともあります。
いずれにしても、事前に調べて予算を立てる必要があります。