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釉薬との上手な交際術

1.陶芸.com販売の釉薬について

陶芸.com扱う釉薬には、次のような種類と特徴があります。

(1).オリジナル液体釉薬

陶芸.comオリジナル企画の釉薬です。初心者の方でも使いやすいように調整されています。また、電気窯でも使用可能なように、比較的低めの温度域で溶け、発色することも考慮されています。 お届けする商品は、既に標準的な濃度に調整済みですが、お客様のお好みで再調整できるように多少濃い目にしてあります。10%程度は水を加えていただいても大丈夫です。

なお、なるべく使いやすい状態でお届けするように心がけておりますが、在庫期間などにより、濃くなったり、固まっている場合もあります。釉薬に含まれる成分の種類によって、程度は様々ですが、 液体釉薬の宿命的なものですので、ご了承ください。
濃くなったり、固まりつつある場合は、ボトルから釉薬容器に取り出したあと(5リットル容器は容器をカッターなどで破り取り出してください)、 いきなり水で薄めずによく攪拌して様子をみてください。水気がなくなったように見えますが、攪拌すると成分と水が分かれ、思ったよりも水気が出てきます。その後に、お好みに応じて水を加えて調整してください。素焼きのかけらを3秒程度浸して1㎜程度の厚みがつけば標準的な濃度です。わかりにくい方は、ボーメ計を使い、40~50度の範囲に収まれば、標準的です。

(2).初心者用粉末釉薬(新日本造形製)

新日本造形製の粉末釉薬は、初心者の方でも気軽に使用できる扱いやすさと、上級者でも満足のいく発色をするのが特長の釉薬です。発色も安定しており、焼くたびに違うということも少ないです。
薄める水の量は、それぞれの袋に記載されていますが、目安としては、1kg対して800~1000ccです(正確には袋の表示でご確認ください)。粉末を釉薬容器に入れた後、一気に水を加えるのではなく、少なめに注ぎ、よく攪拌しながら徐々に水を加えていってください。濃度は、液体釉薬の項目で触れた具合ですが、粗方溶けたこんだ後、100目~150目(80~120メッシュ)くらいのふるいに通し、漉してあげるとより良いかと思います。

(3).上級者用釉薬(日本陶料製・伊勢久製)

基礎釉薬に分類されるものは、日本陶料製の粉末釉薬で、安定した釉薬ですので、水を加えて攪拌後、お好みの濃度に調整してください。標準的にはボーメ計で40度程度です。水の量は1kgに対して、800ccが基本です。

伊勢久製の天然灰窯変釉薬は天然ものの材料を使用した高級感のある釉薬で、窯の種類や温度域、酸化・還元の度合いなど、様々な条件により、発色が変化します。使用に当たっては、基本的には800~1000ccの水で溶くのですが、粉末でも固まりがあったり、場合によってはあく抜き作業などが必要となり、単純に水溶きだけという感覚では面食らってしまうことがあります。しかしながら、天然灰の持つ味のある仕上がりは大変魅力のある釉薬です。

※釉薬の攪拌には攪拌機が便利です、また、凝固した釉薬を解くには、解固剤を2、3滴たらすと、作業が格段に楽になります。

□釉薬の濃度について
釉薬の濃度には、万人に最適といわれる基準はありません。最終的には、素地につく厚みで判断してください。理由は、素焼きの温度が違えば、素地の吸水性が変わり、同じ釉薬に同じ時間浸してもつく厚みは変わりますし、人によって時間の感覚も様々ですので、それによっても厚みを変化させます。また、素地そのものの種類によっても変化します。

あまりにも、薄かったり、その逆にドロドロに濃かったりは問題ですが、上記の理由からもおわかりのとおり、あまり几帳面に濃度を調整する必要はなく、むしろ、自分の釉掛け技術にあった濃度を探し出して、それを会得することの方が重要です。新しい釉薬を手にしたときは、いろいろな条件(厚み・使う素地・焼成方法や温度)を試して、自分の好みに合った濃度や条件を見つけてください。なお、思ったものが再現できるように感覚が身につくまではそれらを記録することも大切です。

 

2.釉薬トラブルシューティング

和陶芸において、釉薬は作品の仕上げに欠かせない反面、初心者や中級者には取り扱いが難しく、焼成が終わり胸をときめかせて窯から作品をとりだしたところ、釉掛けの失敗がそれまでの制作努力を一気に吹き飛ばして、ガックリとした経験はほとんどの陶芸愛好家がお持ちではないでしょうか。
釉薬は何種類もの原材料をブレンドし、通常1,200℃~1,300℃の間のどこかに熔融点があり、熔けてガラス質を形成すると共に、化学反応により変色しますが、①釉薬の原料の粒子が均一に擦られているか、②釉薬を溶かす濃度が適切か、③釉掛けの厚さが適切か、④粘土との相性はどうか、⑤素焼温度は適切か、⑥本焼の温度上昇のステップは適切か、⑦練らしの温度は適切か、⑧酸化焼成なのか還元焼成なのか、⑨冷ましの温度下降のステップは適切か等々の諸条件がピタリと当てはまらないと、なかなか期待通りの仕上がりにはなりません。
ある意味では、それだけ微妙である分だけ、思い通りの作品ができた時の喜びもひとしおであると共に、窯変で思いがけない味わいの作品が得られて、感激するといったことも陶芸の大きな魅力となっています。
実際の陶芸材料の販売を担当していると、お客様の質問やクレームはほとんどが釉薬のことに集中しております。
クレームの多くは「貫入りが入った・流れてしまった・ブクが出た・とびが出た・発色しない等々」といったもので、「メーカーの推奨温度で焼き、説明書通りの水分量で溶かしてかけたのにどうなってるんだ・・・」と続きます。
確かにメーカーが調合済で販売している釉薬は、比較的安定して熔けて発色するように開発されてはいますが、上記のような諸条件を無視してオールマイティーに使える釉薬は、世の中に存在しないと考えて間違いありません。
以下に釉薬で失敗した例とその対策についてアドバイスを掲載させて頂きましたので、釉薬との付き合い方を身に付けて、上手に交際して下さい。

■ 釉薬が流れてしまう

原因・・厚塗りのしすぎは流れ易くなります。
対策・・流れ易い釉薬には、メーカーも「流れ易い」との表示はしておりますが、 流れ易い釉薬は薄掛けにした方が流れにくくなります。

原因・・素焼で焼き締め過ぎると流れやすくなります。
対策・・素焼を700℃以上の高温でおこなうと、素材の肌が焼き締まり過ぎて釉薬の吸収が悪くなります。600℃~650℃程度で6時間程度の素焼だと乗りが良く流れにくくなります。

原因・・素材に汚れやホコリがついている。
対策・・釉掛けする前に、素材を湿らせたスポンジで良く拭きます。汚れやホコリを落とすだけでなく、表面が適度な湿気を帯び釉薬の乗りが良くなる効果もあります。

原因・・本焼き焼成温度が高すぎる。
対策・・釉薬の適度より高温度で焼き過ぎると、熔け過ぎて流れ易くなりますので、珪石等の珪酸質の物を加えて熔解温度を調整します。

※釉薬が流れると棚板に付着して剥せなくなりますので、棚板には必ずアルミ ナ粉を塗るか・アルミナペーパーを敷くかして棚板の保護をします。道具土で"せんべい"を作り、作品の下に敷くのも良くおこなわれる棚板の保護手段です。

■ 貫入が入ってしまう

原因・・冷ましが急すぎる。
対策・・俗に焼成が10時間なら、冷ましはその倍の20時間かけろといわれますが、炉壁が薄いレンガだけの洋窯や、セラミックファイバーだけの電気窯は自然冷却では時間が短くなりますので、熱源を切らずに温度を徐々に下げて調整します。

原因・・粘土と釉薬の相性が悪い。
対策・・粘土より釉薬の方が縮んだ場合に貫入が出ます。素焼で焼き締め過ぎると貫入が出易くなる傾向がありますので、素焼の温度を630℃程度に下げて6時間焼成で試してみて下さい。

■ 釉ムラ・釉ダマリができる

原因・・施釉の段階で釉薬の厚さが一定でなかった。
対策・・筆塗りの場合は一定の厚さで塗るのが難しく、慣れがいるので、慣れない方は浸し掛けで施釉した方が無難です。浸し掛けの際はできるだけ一気に仕上げた方がムラは少なくできます。

原因・・釉薬の発色成分が一定でない。
対策・・釉薬は沈殿が早く、塗ってる側から沈殿していきますので、筆塗りの際などは筆を運んで3回に1回は、釉薬を底から縦方向にかき回しながら塗らないと、上澄みの部分だけを塗った個所ができます。

原因・・釉薬の厚掛け、濃過ぎ・薄過ぎ。
対策・・釉薬を厚掛けしすぎても釉ダマリができやすくムラになりますし、濃度が高過ぎても薄過ぎてもムラは出やすくなりますので、ボーメ比重計で濃度を良く確認してから施釉します。(一般的には40~50度の範囲が適度です)

■ 釉剥がれ・釉チヂミがでる

原因・・焼成温度の急激な上げ過ぎ。
対策・・焼成温度を急激に上げずに、特にあぶりに時間をかけて徐々に上温すると釉チヂミが出にくくなりますし、釉薬が剥がれるのを防ぐことにもつながります。

原因・・釉薬の濃度が濃すぎる。
対策・・濃度が濃すぎると剥がれやすくなりますので、ボーメ比重計で濃度を良く確認してから施釉します。(一般的には40~50度の範囲が適度です)

原因・・素焼温度が低過ぎる。
対策・・素焼の温度が低すぎると粘土が焼き締まっておらず、貫入と逆で釉薬の収縮より粘土の収縮が大きくなり、釉メクレ(剥がれ)がでますので、素焼で素材を適度に焼き締めておきます。

原因・・素焼温度が高過ぎる。
対策・・素焼温度が高すぎても焼き締まり過ぎて吸水性がなくなり、素地と釉薬の間に層ができて剥がれ易くなりますので、素焼温度を適度に調整します。

※高過ぎてもダメ、低過ぎてもダメではどうしたらいいんだとお叱りを受けそうですが"過ぎたるは及ばざるがごとし"と昔からいうように、釉薬と土と火とのバランスの上で陶芸は成り立っていますので、それぞれ個別の釉薬と粘土の組み合わせや、適した焼成方法を、テスト焼成で発見するのも陶芸の楽しみのうちではないでしょうか。

原因・・素材にホコリや油分がついている。
対策・・釉掛けする前に素材を湿らせたスポンジで良く拭きます。ホコリや油分を落とすだけでなく、表面が湿気を帯び釉薬の乗りが良くなる効果もあります。

■ 釉とび(釉の抜けた部分)がでる

原因・・釉薬が濃過ぎる。
対策・・釉薬の濃度が濃過ぎると焼成で収縮の際、釉とびが出易くなりますので、ボーメ比重計で適度な濃度に調整します。(一般的には40~50度が適度です)

原因・・ねばりのない釉薬固有の特性。
対策・・サラサラした感じの釉薬は粘性が少なく、焼成時に釉とびがでることがありますので、CMC等のノリ剤を添加すると釉薬のくっつきが良くなり釉とびを防ぐことができます。

原因・・下絵付けの絵具が影響する。
対策・・下絵具が厚く塗られていたり、絵具の粒子が粗く熔融温度が高いと釉とびが発生しますので、下絵具を使用前に乳鉢で良く擦って粒子を細かくします。

■ 釉薬の表面にブク(アワ状の吹き)がでる

原因・・焼成温度が高過ぎる。
対策・・焼成温度が高過ぎて釉薬が沸騰してしまったために発生しますので、適度に熔ける温度に調整します。

■ ピンホールができる

原因・・素地についたホコリ。
対策・・素地にホコリがついていると、その部分にピンホールが発生しますので、釉薬を掛ける前にスポンジで拭く等、素地を丁寧に清掃します。

原因・・釉薬の攪拌中に気泡が入った。
対策・・釉薬の攪拌は気泡が入らないように、慎重におこなう習慣をつけます。

■ 釉表面のザラつき・艶が不足

原因・・焼成温度が低過ぎる。
対策・・釉薬の熔融温度に達しないと熔けてガラス質も形成されず、艶が出てきませんので、焼成温度を調整します。 ヒーター線の劣化した電気窯では最高温度も低くなりますので、1200℃程度で熔ける釉薬を使用するとうまくいきます。

原因・・釉薬成分の粒子が揃っていない。
対策・・釉薬が熔けない原因として、釉薬の粒子が揃っていないことが考えられますので、粉末釉薬は水を加える前にふるいで漉したり、乳鉢で良く擦る等をおこなって下さい。(特に伊勢久製の天然灰窯変釉薬は絶対にこれが欠かせません)

※粉末釉薬は一旦液体で作り、その後乾燥させてできておりますので基本的には粒子が揃っているはずですが、乾燥の際に再結晶を形成する成分もありますので、粉の状態で粒子をチェックする習慣をつけると良いでしょう。
また、液体釉薬は沈殿しますので、古くなり沈殿が進行すると固まりができてきますので、やはり攪拌後にふるいにかけ、固形物を除くのがポイントです。

原因・・棚板のアルミナ粉や炉内の落下粉。
対策・・棚板の裏面にアルミナ粉がついていると、焼成中に落下しますし、炉内のレンガの粉も落下することがありますので、焼成前に良く取り除きます。

※棚板は必ず上面と下面を決めて使わないと、アルミナ粉が落ちるばかりでなく、棚板の上面に作品から流れて付着していた釉薬も熔けて落下し、下の作品を台無しにしてしまいますので注意して下さい。